| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H1-12

発生過程安定化遺伝子のゲノムワイドスクリーニング

*高橋一男(岡大・RCIS),岡田泰和(岡大・RCIS),寺村皓平(岡大・進化生態)

生物の形態形質の不安定性は、様々な生命プロセスの不安定性の結果として生じると考えられる。そのような生命プロセスの不安定性を緩衝し、最終的な形態形質を安定化することは、生物の適応にとって重要である。Waddington(1942)は、生物の表現型の安定性を保証するなんらかのメカニズムがあると考え、遺伝的、物理的環境変動の表現型への影響を緩衝するCanalizationという機構を提案した。実際に、分子シャペロンの一種であり、細胞内で、タンパク質のフォールディングの補助や、変性したタンパク質の修復などを行っているHsp90は、このCanalizationの分子実体の一つであると考えられている。一方で、Milton et al. (2003)は、Hsp90の阻害が、発生過程の安定性の指標である、形態形質の左右対称性には影響しないことを示し、Canalizationと発生過程の安定性が別のメカニズムによって担われている可能性を示した。これまでCanalizationや、発生過程の安定化機能が盛んに研究されてきたのは、Hsp90だけであり、それ以外で、発生過程の安定化に寄与する遺伝子の探索はなされていない。本研究では、キイロショウジョウバエを材料として、これまで調べられてこなかった、発生過程を安定化する機能を持つ遺伝子をゲノムワイドに探索し、その機能を解明することを目的とした。ゲノム全体に渡る欠失系統コレクションについて、Canalizationの指標である、形態形質の系統内分散の大きさと、発生過程の安定性の指標である、体の左右での形態差(Fluctuating Asymmetry:FA)と形態形質の系統内分散の大きさを指標として、ゲノムワイドなスクリーニングを行った結果を報告する。


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