| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) H2-01

外来種スイセンハナアブの餌資源−原産地と侵入地の比較−

*須島充昭,伊藤元己(東大・総合文化)

スイセンハナアブMerodon equestrisはヨーロッパ原産のハナアブで,日本へは戦後輸入植物に付着して小規模な侵入を繰り返し,1990年代以降,関東,東北,北海道における野外への定着が確認されている.なお,本種は原産地では温暖な地域(地中海沿岸)にも分布しており,日本における分布域も西進する可能性がある.また,本種はマルハナバチ擬態の種といわれており,著しい色彩多型を示すことも知られている.一般に雄は3型,雌は5型(雄と共通の3型プラス2型)に識別されている.

本種成虫は原産地ではキク科植物を好んで訪花するといわれている.また,幼虫は原産地においてヒガンバナ科(スイセンなど)やユリ科(チューリップ,ヒヤシンスなど)の球根を摂食するため害虫とみなされている.そこで本研究は,本種の侵入地の一つ日本における餌資源解明を目的とした.演者は2009年,東京と横浜に各1地点調査地を設定し,そこでランダムに本種成虫を捕獲した.その結果両地点から計120個体を捕獲し,そのうち32個体を訪花中に捕獲した.訪花植物の内訳は,ハルジオン17,オオアマナ9,セイヨウタンポポ5,ハタケニラ1であった.原産地同様,キク科(ハルジオン,セイヨウタンポポ)を好んでいたが,ユリ科(オオアマナ,ハタケニラ)への訪花が見られた点が特徴的であった.また,日本での本種幼虫の餌資源を解明するため,公的機関の収蔵標本調査を進めた.その結果,標本のラベルデータから,スイセンとヒガンバナ(後者は東アジア特産)を幼虫の餌資源(寄主植物)として特定できた.なお,本種幼虫の餌資源の更なる解明(輸入球根の検疫によるものも含む)には幼虫の分子同定が有効であるため,本種のDNA barcode配列を決定した.


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