| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I2-01
ハマダラカ(Anopheles)の広域分布はマラリアの感染リスク評価において非常に重要である。しかし、その分布図は限られた観測値と気候条件を基にした経験的なものが多い。そこで本研究では、潜在的な分布を時空間的に高い解像度で表現できるようにするために、まずハマダラカの生活史に着目して、その生育のモデル化を行った。
ハマダラカの成長は温度に依存すると仮定した。その一生の前半は水中で過ごすため、本モデルでは同時に地表面における水分条件をとくに考慮し、さらに熱収支モデルにより平衡水温を求めた。成虫以降の成長は気温に依存するとした。このモデルを用いて韓国、日本、中国、インドでのハマダラカの生息調査の結果を再現したところ個体数の増減とよく対応することがわかった。そこで、本モデルをモンスーンアジア域に適用し、ハマダラカが成虫まで成長すると次世代が誕生するとして生息可能な年間世代数を数え、その地理的分布を示した。得られた世代数分布によると、高温の低緯度から緯度が高くなるにつれて世代数は減少していた。これらの結果は、本モデルによるハマダラカの生息分布評価は妥当であることを示唆している。