| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) I2-06

知床国立公園における交通量のシュミレーション

*蜂谷菜保子(北海道大学環境科学院), 庄子康(北海道大学 農学研究院), 愛甲哲也(北海道大学 農学研究院), 西成活裕(東京大学 先端科学技術研究センター), 佐竹暁子(北海道大学 創成科学共同研究機構)

世界遺産登録以来、知床国立公園を訪れる利用者が急増し、自然環境の破壊や混雑による利用体験の質的低下、野生動物との遭遇などの問題が生じている。このような問題を緩和するため、立ち入り人数など細かい制限・規制を行うことが求められている。本研究では、以前から問題視されている車両による渋滞と、今後導入が検討されている認定ガイド制度、マイカー規制の変更との関係に着目し、交通量のシミュレーションモデルを開発し、規制が混雑に与える影響を定量的に予測し、今後の知床国立公園の利用管理に役立てることを目的とする。

モデルでは、公園内の道路を区画で区切り、1区画あたり最大1台の車両が入ることができ、前の区画にすでに車両が入っていると前進できないと仮定する。ウトロから出発し、知床五湖とカムイワッカへ向かうと分岐点に遭遇する。分岐点では、アンケート調査より推定された選択確率に基づき、1つの観光地を選ぶと仮定する。それぞれの観光地の駐車可能量と平均滞在時間、車両が公園の入り口にあたるウトロに入ってくる確率に依存して、渋滞の程度がどのように変わるかを調べた。ウトロに車が入る確率が高いほど渋滞は起きやすく、各地での滞在時間と駐車可能量のバランスが渋滞に影響を与えることが明らかになった。また、知床五湖での滞在時間が減ると、知床五湖での混雑は緩和されるが逆にカムイワッカで混雑がエスカレートすることがわかった。

以上の結果を、交通量調査から得た実際の車両密度と比較し、モデルの整合性を確認すると共に、今後より実践的なシミュレーションを進めていき認定ガイド制度とマイカー規制の導入方法を検討する。


日本生態学会