| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I2-08
熱帯雨林に生息するシロアリの中に、アリのように野外で行列を作って採餌活動を行う「コウグンシロアリ」と呼はれるグループがある。コウグンシロアリの採餌活動は、2-3日おきに、何十mもの距離を半日以上にわたって行われる。シロアリの多様性が高い熱帯雨林では、シロアリ同士の相互作用がそれぞれの種の分布に影響を与えているだろう。特にコウグンシロアリの様に広い活動範囲をもつものは相互作用が顕著であると思われる。同所的に生息するコウグンシロアリの分布様式を明らかにすることは、森林内での彼らの相互作用を知る手がかりとなる。
マレーシア、ランビルヒルズ国立公園には、4種のコウグンシロアリ(Hospitalitermes hospitalis, H. lividiceps, H. umbrinus, 及びLongipeditermes longipes)が同所的に生息している。本研究では、4種の巣及び採餌場の位置、採餌行列の距離と高度、行列している場所を記録し、採餌行動範囲を比較した。
その結果、H. hospitalisとH. lividicepsは共に、高木の板根部や樹上に営巣し、樹冠部を採餌場としていた。この2種は、樹幹や地表面の倒木、落葉、落枝上を伝って行列するが、地表土壌を行列することは少ない。一方、H. umbrinusは完全樹上生活者であった。営巣場所も採餌場も常に樹上に位置し、採餌行動でも地表には全く降りてこなかった。反対に、Longipeditermes longipesは生息域が地表のみに限定されていた。しかし、地表面の倒木、落葉、落枝上を伝って行列するH. hospitalisおよびH. lividicepsと異なり、地表土壌を行列することが多かった。一連の調査から、4種のコウグンシロアリは種ごとに活動範囲が異なり、同一森林内で棲み分けていることがわかった。