| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) I2-10
シロアリのコロニーはワーカー、ソルジャー、ニンフ、生殖虫(一次生殖虫、ニンフ型幼形生殖虫、ワーカー型幼形生殖虫)、幼虫など、異なるカスト(階級)の血縁個体で構成される。いかなる要因が自然条件下のコロニーのカスト構成、性比に影響を与えるかを明らかにするため、沖縄県西表島においてヤエヤマシロアリReticulitermes yaeyamanusの野外コロニーの調査を行なった。合計15の営巣材を2008年と2009年の3月に採集し、(1)生殖虫の有無、(2)カスト構成、(3)ワーカー、ソルジャー、ニンフの性比、(4)カストごとの全個体数を調べた。
巣内にみられた個体数は、およそ1000〜30000(平均14000)と幅があった。生殖虫の構成には、一次生殖虫ペア、一次生殖虫ペアとワーカー型生殖虫、一次生殖虫の雄とニンフ型生殖虫とワーカー型生殖虫、ニンフ型生殖虫とワーカー型生殖虫、ワーカー型生殖虫のみの5タイプがみられた。ワーカーとソルジャーは全てのコロニーで得られたが、ニンフ、幼虫は一部のコロニーでは得られなかった。多くのコロニーで、ワーカー、ソルジャー、ニンフの性比はほぼ1:1であったが、ニンフの性比が極端に雄に偏ったコロニー、ワーカーの性比が雌に偏ったコロニーが1つずつ観察された。
特徴的な生殖虫構成のコロニーについては、マイクロサテライトマーカーを用いてコロニー内の遺伝構造を調査し、生殖虫とワーカー・ニンフとの親子関係の推定を試みている。さらに、野外コロニーでのカスト構成・性比と生殖虫の有無、総個体数に対して、どのような遺伝的背景が影響を与えているのか考察する予定である。