| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) K1-08
植物を異なる光環境のもとで育成すると,茎の長さや太さ,葉の着き方,枝分かれなど,植物の受光体制や力学的安定性に関わる外部形態(アーキテクチャ)に違いが生まれる。これらの違いが,光や窒素など資源利用に影響を与え,成長量の差を生むと考えることができる。あるいは逆に,アーキテクチャの変化は,与えられた環境のもとで植物が資源の有効利用をはかった結果と考えることができる。
これらを検証するために,一年生草本シロザを孤立状態あるいは群落状態で育成し,光環境が植物のアーキテクチャ,資源利用,成長に与える影響を解析した。アーキテクチャについては,節間,葉,腋芽から構成されるメタマーを単位に,主軸と分枝,茎と葉への乾物分配,葉面積分布等を計測した。
主軸のメタマー数には孤立個体,群落個体で差がなかった。節間長は群落で大きく,直径は孤立で大きかった。分枝は数,サイズとも孤立個体で大きかった。群落個体は上方成長を促進し,孤立個体は側方成長を促進した。孤立個体は根へ,群落個体は茎へ乾物の多くを分配した。結果,孤立に比べ群落個体で力学的安定性は低下している。葉/茎比は分枝で大きく,分枝の多い孤立個体で大きかった。主軸葉のサイズと枚数は孤立と群落個体で差はなかった。分枝葉は小さいが,孤立個体は分枝葉が多く,全葉面積も孤立個体で大きかった。
窒素利用効率(窒素吸収量に対する乾物生産量)は受光量の多い孤立個体で大きく,光利用効率(受光量に対する乾物生産量)は限られた光条件のもとに葉を展開する群落個体で大きかった。強光のもとでは窒素利用効率は高いが光利用効率は低く,光制限のもとでは光利用効率は高いが窒素利用効率は低下する傾向がある。
Ecological Research (2009) DOI 10.1007/s11284-009-0666-6