| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K1-10

散孔材樹種と環孔材樹種における枝-葉間の資源配分および材の水分通導の違い

*東郷真波(京大院・農),岡田直紀(京大院・農)

散孔材樹種と環孔材樹種は現在,道管の直径と配列の違いによってのみ分類され,枝や葉の機能的な違いについては多くが明らかになっていない。そこで本研究では,枝-葉間の資源配分と,その決定要因である枝の水分通導・力学的強度を比較し,散孔材樹種と環孔材樹種を機能的に再定義することを目的とした。

京都大学付属芦生研究林において,落葉散孔材樹種3樹種(ブナ,ミズキ,ミズメ),落葉環孔材樹種5樹種(クリ,ケケンポナシ,ミズナラ)の枝を採取し,生枝下直径と葉面積,枝と葉の質量を測定した。水分通導の指標として枝のhydraulic conductivityおよびleaf-specific conductivityを,力学的強度の指標として,材の密度に加え,最大応力と曲げヤング係数を3点曲げ試験により測定した。

枝の断面積と葉面積は,樹種ごとに高い相関を示し,パイプモデルを支持する結果となった。また,枝断面積あたりの葉面積で,枝の水分通導性との間に相関が見られた。力学的強度との相関は認められなかった。

散孔材樹種と比較して,環孔材樹種では,枝断面積あたりの葉面積および枝の水分通導性が高かった。力学的強度では最大応力のみ高く,密度と曲げヤング係数では有意な差が見られなかった。

環孔材樹種では,枝の水分通導性と最大応力が高いことから,ある枝断面積に対してより多くの葉を維持できると言える。ただし夏季の自然状態では,道管の50%近くが閉塞していることが示唆された。環孔材樹種では,葉の光合成能力が低いか,または水利用効率がよい可能性が示唆される。


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