| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(口頭発表) K2-03

北海道におけるコナラ属の開葉の産地間変異

*生方正俊,那須仁弥,福田陽子

北海道に広く分布するコナラ属樹種であるミズナラ、コナラおよびカシワは,葉等の形態が変化に富み、産地間差が大きいことが知られている。さらにこれらの3樹種間の様々な段階での種間雑種の存在がこれらの多様な変異を生み出している原因の一つになっていることが指摘されている。演者らはミズナラの地理的変異を解明する研究を進めており,今までに葉や堅果の形質,開葉時期および葉緑体DNA多型において,北海道の脊梁山脈を境にした東西地域間で明瞭な違いがあることを明らかにした。東西地域間差が生じた原因としては,気象等の環境条件の違い,過去からの分布の変遷等が考えられる。

コナラ属樹種の地理的変異を解明する研究の一環として、北海道内各地から収集され,江別市の森林総合研究所林木育種センター北海道育種場内に植栽されている60産地430系統のコナラ属樹種について,開葉時期の調査を断続的に行っている。1993年および1994年に調査した結果は既に発表しているが、今回は、これらの調査の15年および16年後である2009年に再度調査を行った。冬芽の芽鱗がゆるみ内側の緑色の部分が露出した日を開葉日とすると、1993年および1994年は、最も早く開葉した日は、それぞれ5月7日および5月2日であり、最も遅く開葉した日は、それぞれ5月28日および5月23日だった。2009年は、最も開葉が早い日および遅い日は、それぞれ5月1日および5月23日だった。開葉の順位が北海道の西部地域産系統から東部地域産系統へ進むという全体的な傾向は2009年においても変わらなかったが、全体的に開葉の遅い系統の開葉日が早まる傾向がみられた。これは、春先の気温の上昇パターンが影響しているものと考えられる。


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