| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(口頭発表) K2-07
【はじめに】アメリカ南部のミシシッピ河下流域では、2005年のハリケーン「カトリーナ」がもたらした多量の降雨と高潮による湿地林根圏の塩濃度上昇により、甚大な被害が生じた。被災した湿地林には、外来樹種であるナンキンハゼ(Sapium sebiferum)やセンダン(Melia azedarach) の急激な個体数増加が確認され、植生の変化が懸念されている。本研究ではミシシッピ河流域の主要な湿地林構成樹種であるヌマスギ(Taxodium distichum)と、外来種のナンキンハゼおよびセンダンの苗木を用いて、塩水中への水没処理実験を行い、3樹種の生理・成長反応について比較検討した。
【方法】実験は鳥取大学農学部のガラス室で行い、2年生のヌマスギ、ナンキンハゼ、及び1年生のセンダンのポット苗を用いた。2008/6/11から14日間、塩濃度の異なる水槽(0mM、200mM)に苗木全体を水没させ、その後、淡水による土壌冠水条件下で42日間回復観察を行った。解析項目は伸長・肥大成長量、器官別乾燥重量、光合成速度、及び器官別陽イオン濃度である。また2009年に2年生のヌマスギとナンキンハゼの苗木を使用し、沈水期間の長短による生理的変化を評価した。2009/6/11、6/16、6/23、6/30、7/2、7/4の順に、塩濃度の異なる水槽(0mM、75mM)に、苗木全体を水没させた。7/7に一斉に引き上げ、淡水による土壌冠水条件下で42日間回復観察を行った。
【結果】ヌマスギとセンダンは、塩水沈水から淡水による土壌冠水に移行した際に全個体が枯死した。一方ナンキンハゼは、新葉の展開や不定根形成という形態的な回復が確認され、冠水及び塩水に対する耐性が、他の樹種より高いことが分かった。またナンキンハゼでは、適合溶質であるベタイン類の塩水ストレスによる増加を確認した。