| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-108

根を含む樹木個体呼吸  ー混合ベキ関数によるメタボリックスケーリングー 

森茂太・西園朋広・石田厚(森林総研)山路恵子(筑波大)萩原秋男・諏訪錬平・R.A.T.M. Hoque(琉球大)大澤晃(京都大)

「生物個体呼吸と個体サイズの関係」は生物成長、構造―機能、等を左右する生物学上の重要課題である。しかし、樹木個体サイズの幅は大きく、根を含む個体呼吸は十分に分かっていない。本研究では、シベリア〜赤道まで271個体の樹木個体呼吸を自作した個体チャンバーに入れて10億倍の重量幅で直接、同一原理で実測した。その結果、個体呼吸―重量関係を単純ベキ関数で近似するとベキ指数f は0.844 (n = 183, 95% CI of f = 0.824-0.863, r = 0.99, p <0.001)であり、有力説の1,3/4、2/3とは有意に異なった。その理由は、両者の関係が上に凸の傾向があるためである。そこで、AICで単純ベキ関数、二次関数、混合ベキ関数の3関数間でモデル選択を行った。その結果、小サイズほど比例式に漸近し、大サイズほどベキ指数3/4の単純ベキ関数に漸近する混合ベキ関数が選択された。この混合ベキ関数 Reich (Nature 2006)の比例式とWest, Brown, Enquist (Science, 1997)の指数3/4の双方を支持した。

混合ベキ関数成立の理由は、植物代謝―個体サイズ関係に重力が関与し、植物の機能―形態を左右するためだろう。小個体では重力影響が小さく、幹内部まで呼吸が高く個体呼吸は重量比例である。サイズが大きいと重力に対抗し植物体を支えるため幹内部に無呼吸部分を蓄積し、葉の重量割合が低下するためである。

(本報は、PNASにOA掲載、ダウンロード可能。Mori et al: Mixed-power scaling of whole-plant respiration from seedlings to giant trees. PNAS(2010))


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