| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-111
樹形のパイプモデルを仮定すると、個体の生枝下高HBにおける幹直径の二乗DB2は個体葉量Fに比例するため、既知のDB2〜F関係のアロメトリーがあればDB2の実測値からFを非破壊的に推定できる。さらに、DB2=DBH2×[H―HB]/[H―1.3](DBH、胸高直径;H、樹高)が近似的に成立することがダケカンバ個体群で報告された。この式の一般性が確かめられれば、地上からの毎木調査測定値を既知のパイプモデルアロメトリーに適用して個体葉量を推定できる。上述の関係式は、幹先端からの幹長と幹直径の二乗D2とがHB以下の部分で比例関係にあることを示唆する。そこで、ヒノキ個体群に対する21年生から39年生までの19年間にわたる毎木調査データ(全個体の各年のH、HB、DBおよび高さ1mおきの幹直径Dの実測値)を用いた樹幹形アロメトリーの解析を行った。DB2とその推定値DB Est2 (=DBH2×[H―HB]/[H―1.3])との個体間関係においては、枯死前の被圧個体でDB Est2が過大評価になる傾向を除けばどの林齢においても両者はほぼ1:1の関係にあり、DB Est2がDB2の推定値として有効性であることを確認できた。この個体間関係が群落の発達過程で成立し続けるためには、幹の伸長(樹高成長)と生枝下以下の部分の肥大とが一定の関係を満たすように個体が成長していると考えられる。そこで樹齢t、個体iの生枝下高以下の部分について個体内の樹幹形アロメトリーをLi, t=cDi, tK(Li, t、幹先端からの幹長;Di, t、その位置の幹直径)で定義し、切片c や傾きKが個体サイズや樹齢に応じてどのような値を取るのかについて調べた。最初の数年以降はサイズの小さい個体ほどKが小さくcが大きい傾向があった。Kの個体群平均値は林齢とともに増加し、林齢36年以降は2との有意差はなくなった。