| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-112

カンボジアの在来・外来樹種のガス交換特性の比較研究

*宮沢良行,立石麻紀子,熊谷朝臣,大槻恭一(九大演習林),溝上展也(九大・農),Ma Vuthy, Sokh Heng (Forestry Administration of Cambodia)

インドシナ半島の南部のカンボジアには、社会林業地(コミュニティフォレスト)が広く分布する。社会林業地は住民により管理される森林で、カンボジアの在来種に加え、住民が植栽した早生外来樹種も多い。社会林業地の機能である蒸散や光合成生産に、外来種がおよぼす影響を予測することは、住民の外来種植栽の活動を材生産以外の視点から評価する上でも重要である。そこで本研究では、個葉の生理特性とその環境応答の計測を行うとともに、生理−気象混合モデルを用いて、外来種と在来種の光合成および蒸散速度の比較をおこなった。

対象樹種には、外来種のユーカリとアカシア、在来種のフタバガキとサラノキを用いた。モデルでは、光合成諸特性を生理入力情報として、日射、大気飽差、気温などを環境入力情報として、10分間隔で光合成、気孔コンダクタンスと蒸散速度の計算を行った。光合成諸特性は2ヶ月間隔で、雨季と乾季をまたいで計測した。

日当たりの光合成・蒸散量は、外来種のユーカリで高い一方で、他の三種間には有意差が見られなかった。その背景には、光合成の諸特性が、三種間で類似したことがある。季節感で比較すると、どの種でも雨季と乾季で日蒸散量には差が見られなかった。乾季には、蒸散圧が高いものの、葉が気孔を閉じるために蒸散が抑制されていたことが原因だった。一方、日光合成生産は、高温と高い蒸散圧にさらされた乾季よりも雨季に高かった。本研究により、外来早生種の植栽は、必ずしも森林の水利用や二酸化炭素吸収に影響を及ぼすことがないこと、またカンボジアの森林では、乾季には水利用が増えることはないものの、CO2吸収は強く抑制される実態が示唆された。


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