| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-113
窒素固定植物は、硝酸吸収と共に根粒菌との共生による窒素固定が可能である。窒素固定機能は、貧栄養土壌環境下でのこれらの植物の成長にメリットとなることが示されている。植物が生育する野外環境は多様だが、窒素固定植物は日当たりのよい貧栄養な環境に生育するものが多い。根粒菌を伴うことは、植物にとって炭素消費のコストになることが示唆されており、このことが窒素固定植物の生育条件を制限している可能性がある。本研究では、根粒菌を伴う窒素固定植物の成長に対する、光環境および土壌窒素濃度の影響を栽培実験により調べた。
4光強度(27〜680μmolm-2s-1)×3土壌硝酸濃度(0.01〜1mM KNO3)計12条件のもとで根粒菌接種および非接種処理のミヤコグサ実験系統(MG20)を栽培し、展葉から33日目の個体のバイオマスおよび成長解析関連形質が根粒菌接種・非接種処理間でどのように異なるのか比較した。
根粒菌接種処理個体のバイオマスは土壌窒素濃度よりも光強度により強く影響され、光強度が低い条件で大きく低下した。一方、根粒菌非接種個体のバイオマスは土壌硝酸濃度および光強度の影響をともに強く受け、特に強光条件において、土壌硝酸濃度の増加に伴うバイオマス増大の傾向が著しかった。
当初は、強光時の根粒菌接種個体のバイオマス生産は根粒菌非接種個体のものを上回ると予想していたが、根粒菌接種個体が非接種個体を上回ったのは土壌窒素濃度が低い条件下のみであった。これらの結果から、窒素固定植物が根粒菌を伴うことがバイオマス生産の上でメリットになるのは、貧栄養でかつ強光条件の時のみであることが示唆された。今回の発表では、バイオマスおよび窒素利用の面から根粒菌を伴うことのコストについて検討したい。