| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-119

光合成窒素利用効率の種間差におけるルビスコと細胞壁の役割

*彦坂幸毅, 重野亜紀(東北大・院・生命科学)

葉の光合成能力は種間で大きく異なることが知られている。その生理学的原因と生態学的意義は植物生理生態学において最も基本的な疑問の一つである。我々は、光合成の鍵酵素であるルビスコと細胞壁の量を、光合成能力が大きく異なる26種の葉について測定した。我々は光合成窒素利用効率(PNUE;窒素あたりの光合成能力)に着目し、これをルビスコ利用効率(ルビスコあたりの光合成能力)とルビスコへの窒素投資率の積として解析した。ルビスコ利用効率のばらつきはPNUEのばらつきの70%を説明した。ルビスコ利用効率のばらつきの一部は気孔コンダクタンスによって説明され、他に葉肉コンダクタンスやルビスコの酵素的性質が関連していると考えられた。ルビスコへの窒素投資率はPNUEと有意な相関があったが、やや弱かった。細胞壁への窒素投資率は葉重/葉面積比が増加するとともに増加したが、ルビスコへの窒素投資率との相関はなかった。この結果は細胞壁への窒素投資率はPNUEのばらつきを説明しないということを示唆する。PNUEの種間差は、単一の要因では説明できず、いくつかの要因の小さな違いの積み重ねによって大きなばらつきが生じることが明らかとなった。


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