| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-126

高CO2下で生育させた落葉広葉樹の成熟葉は土壌乾燥ストレスを受けやすくなるか?ーImaging-PAMによる評価ー

*飛田博順, 北岡哲, 上村章, 丸山温, 宇都木玄(森林総研・北海道)

高CO2環境下で生育した樹木の気孔コンダクタンスは、通常のCO2下に比べて低下し、光合成の水利用効率が上昇する。一方、高CO2下で生育した葉の水分特性は、通常のCO2下に比べて飽水時の浸透ポテンシャルが高く、より湿潤な条件に対応した性質を示す場合がある。これは高CO2下で発達した葉の乾燥耐性が通常のCO2下で発達した葉より低いことを意味する。この高CO2下での乾燥耐性の低下により、樹木の成熟葉が受ける土壌乾燥ストレスが高CO2下で増加する可能性が考えられる。この予想を検証するために2段階のCO2濃度(370 ppmと720 ppm)下で落葉広葉樹のポット苗を生育させ、葉の成熟後に土壌乾燥処理を施し、光合成活性の変化を追跡測定した。光合成活性の評価にImaging-PAM-MINI-versionを用い、光合成反応の面的評価を試みた。本報告では面的評価の前段階としてImaging-PAMの測定値の妥当性を検討した。Fm-factor(1.361)による補正を行ったImaging-PAMのFv/Fm値は、PAM-2000の測定値と比べて妥当な値であることが確認された。今回の乾燥処理では、シラカンバ成熟葉のFv/Fmは、CO2処理に関わらず顕著な低下を示さなかった。エゾノキヌヤナギ成熟葉の土壌乾燥に伴うFv/Fmの変化もCO2処理間で顕著な違いを示さなかったが、シラカンバと異なりエゾノキヌヤナギはCO2処理に関わらず多数の葉を脱落させた。今回の実験では、「高CO2環境下の湿潤条件下で成熟した葉は乾燥ストレスを受けやすい」という予想は支持されなかった。


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