| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-133

エゾノキヌヤナギのガス交換特性

*上村章,宇都木玄,飛田博順,北岡哲,丸山温(森林総研北支)

木質系バイオマス生産作物候補として、北海道では、ヤナギが着目されている。ヤナギは、挿し木が容易で初期成長が早く、萌芽により再生する能力が優れているという特徴がある。より成長の優れたヤナギ樹種・クローンの選抜、低コストでの栽培技術の開発、環境適応特性の解明が求められている。本研究では、これまでの研究により、北海道に自生し高い成長量が期待されるエゾノキヌヤナギを材料に、そのガス交換特性から環境適応性の評価を試みた。渓畔林樹種であるヤナギのガス交換特性は、特に水利用に関して、北海道に広く分布し同じく遷移初期種であるシラカンバや遷移後期種のミズナラと異なることが予測される。

測定には、エゾノキヌヤナギ10クローンが選ばれた。挿し穂は、各クローンの当年枝から約20cmの長さで採取され、苗畑に植栽された。一部成長優良クローンは、施肥の成長、ガス交換特性への効果を調べるために、緩効性肥料(窒素量で300kg/haと100kg/ha)施肥処理と無施肥で育てられた。また、同所に生育させたシラカンバ、ミズナラ実生稚樹とガス交換特性の比較を行った。

エゾノキヌヤナギ10クローンの光飽和の純光合成速度は、低いクローンは高いクローンの63%とばらつきがあり、低いクローンの値は、ミズナラ、シラカンバと同程度であった。ミズナラ、シラカンバと比べて、エゾノキヌヤナギの光合成能力(Vcmax、Jmax)は、特に大きくなかった。エゾノキヌヤナギは、大きな気孔コンダクタンスを持った。このことは、エゾノキヌヤナギが、光合成への低い気孔リミテーション、高い蒸散速度を持つという結果を導いた。その他得られた水消費型の葉の特性の結果を含め、エゾノキヌヤナギの高い成長量を維持するためには、土壌が極端に乾燥する条件下に植栽しない必要があることが示唆された。


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