| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-137
植物の遺伝的多様性を維持するには、異なるエコタイプ間で交雑が起こらないよう注意が必要である.現在、緑化工事等の場面において大量の在来植物種子が用いられているが、これらの多くは外国産であったり、あるいは国内産であっても特定の場所から採取されたものであったりするが、これらについてエコタイプが発達しているかは定かでない.本研究では、在来緑化植物としての利用が進んでいるススキについて、産地別に土壌の化学的特性に対する生育反応を調査し、エコタイプの発達について検討した.
中国産、北広島(北海道)産、浜中町(北海道)産のススキ種子を、乾土20gを充填した50mL容ビニールポットに播種し,インキュベータ内にて35日間25℃で生育させた.土壌は,低pHでかつ貧栄養な非アロフェン黒ぼく土(宮城県大崎市)およびこれに石灰(CaCO3),リン(H3PO4),窒素(KNO3)を適宜加えたものを用いた.
3タイプのススキは、いずれも石灰とリンの両方を添加した区で最も高い乾燥重量を示した。その中でも中国産は、最も高い乾燥重量を示し、初期生育速度が最も速いことが明らかとなった.また、中国産はリンが添加してあれば石灰添加による乾燥重量の増加は有意ではなかった(ANOVA, 5%).北広島産の無処理区は、石灰単独処理およびリン単独処理区との間で有意な差は認められなかったが、石灰とリンの両方を添加すると約3倍の有意に高い乾燥重量を示した.以上の結果から、土壌の化学的特性に対するススキの生育反応は産地別で異なっており,ススキはエコタイプが発達しているものと考えられた.したがって、ススキを人為的に大量移動させると、異なるエコタイプ間同士で交雑が起こり、遺伝的多様性に対して悪影響を与える可能性が示唆された.