| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-140

植物の弱光環境下における最適物質分配 なぜ根の割合を少なくするのか?

*杉浦大輔, 舘野正樹(東大・院・理・日光植物園)

最適な葉/根比および葉の窒素濃度を予測する物質分配モデルにより、植物は弱光環境下において、成長速度を最大化するために根の割合を少なくすることが示唆された。

植物は置かれた環境に合わせて形質を可塑的に変化させ、適応度を最大化するように成長していると考えられる。特に地上部/地下部比は、光・土壌栄養条件に反応して大きく変化し、植物の成長速度を決定する主要因となる。林床などの弱光環境下において、植物の根の割合が少なくなる現象は、草本から木本植物まで普遍的に観察されているが、これまでの解釈は、『弱光環境下では成長を最も律速する光を受容するために葉の割合を増やして根の割合を減らす』、と述べるにとどまり、理論的な解析は行われていなかった。

そこで、現実の気象条件(光・気温)、葉の光合成特性(窒素−光合成・葉温−呼吸)を組み合わせた純生産量予測モデルを作り、最適物質分配モデルを用いて最適な葉/根比、葉の窒素濃度を予測した。

パイオニア木本実生のヤマグワ、トウカエデを用いたポット実験による検証結果は予測を支持した。これらの結果から、強光環境下と同様に弱光環境下においても、植物の物質分配を左右する要因としての窒素の重要性が示唆された。


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