| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-142
植物にはそれぞれ強光環境、弱光環境で有利な種がいる。また、種の中でもある程度の可塑性がある。ある光環境において、植物が定着するのに重要な生理的・形態的特性に関しては多くの研究がある。特に暗い環境では、近年、成長よりも防御が重視されるという観測結果が主流である。そこでは、相対成長率(RGR)には負の効果を与えるが暗い環境では生存に有利さをもたらしうる特性として、防御や貯蔵に関する特性が注目されている。代表的なものはLMA(葉の面積当たりの重量。SLAの逆数)である。しかし、異なる光環境に適応した種間でのRGRやLMAの大小関係は文献によって異なる場合もあり、いまだ「耐陰性」の統一的な理解はなされていない。また、多くの文献では定性的な種間比較がなされるのみであり、各特性が成長や生存に与える効果を定量的に解析した例は極めて少ない。
本研究ではあえてRGRに的をしぼり、生理的・形態的特性がRGRに与える効果を解析した。暗い環境における植物の戦略を理解するのには、RGRはあまり良い指標ではないかもしれない。しかし成長と生存のトレードオフだけでは腑に落ちない点も多い。例えば林床では、同程度のLMAでも、陽性の落葉高木は定着できないが、落葉低木にはかなり耐陰性をもつものもいる。防御的な投資も含めたうえで、光が制限された中での植物の経済状況をはっきりさせるべきだと考えた。
そこで、RGRに影響を与えうる変数を考え、それらがRGRに与える効果を計算した。光の利用可能性が異なるとき、RGRを最大化させる変数セットはどう変化するだろうか。また、ある光環境に適した変数セットが違う光環境におかれた時、RGRはどう変化するだろうか。変数セットを現実の植物の特性と対応させるとどうだろうか。
今回の結果は単純化された仮説にすぎない。しかし、野外の多様な光環境下でみられる植物の成長戦略を理解するヒントになるだろう。