| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-143
つる植物には異形葉性という現象が観察される場合がある。キヅタでは、若いシュー
トの葉と花芽形成能力を持つ成熟したシュートの葉では明らかに異なる形態が観察さ
れる。しかし、テイカカズラでは、林床に位置する葉と高所の葉では明らかな形態差
異が見られるものの、キヅタのような明瞭な変化は観察されない。本研究では、林床
から樹幹上のテイカカズラの葉の形態的・生理的特性を調べ、異形葉性と着葉位置と
の関係を明らかにすることを目的とした。
調査対象は、岐阜県岐阜市金華山に自生するテイカカズラとした。成長にともなう葉
の形態的変化を調べるため、様々な高さ(6cm〜1110cm)から葉を採取した。葉の特
性を表す形質として、葉面積(cm2)、葉長(mm)、葉幅(mm)、クロロ
フィルaおよびb量(μgChl/ cm2)、クロロフィルa/b比、乾燥重量(mg
)、LMA(mg/ cm2)、柵状組織の層数、葉の厚さ(mm)、海綿状組織の
厚さ(mm)、柵状組織の厚さ(mm)、そして表皮細胞の厚さ(mm)を測定および計算
した。葉の採取は、2008年10月から11月、2009年10月に行った。2009年に採取した葉
はすべて、花芽形成を行ったシュートから採取した。
ほとんどの葉の特性は、地上からの高さにしたがって連続的に変化した。テイカカズ
ラの葉の異形葉性は、葉の特性を区分する明瞭な境界のある異形葉性ではなく、連続
的に変化する現象であった。また、採取高さが高くなるにつれて、陽葉的傾向を示し
た葉の特性(葉の厚さ、クロロフィルa/b比)とそうでない葉の特性(葉面積、海綿
状組織)を同時に示した。これらの結果について、樹冠や樹幹に被陰された環境を登
攀するテイカカズラの生活型との関係について考察した。