| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-172

植物に有益となるアクアポリンの探索:ダイコン由来アクアポリンの場合

*大西祐作,半場祐子(京都工繊大院),土平絢子,前島正義(名古屋大・生命農学研究科),河津哲,加藤直樹,土居智仁(王子製紙・森林資源研究所)

地球温暖化に伴う気候変化や,人口増加による食料不足といった懸念から,高成長性とストレス耐性を兼ね備えた有用植物の作出が求められている。これまでにも様々な研究のアプローチがなされているが,両方を兼ね備えた特徴をもつ植物の報告例は少ない。そこで我々は,水チャネル機能を有する膜局在型タンパク質,アクアポリンに着目した。現在のところ,アクアポリン過剰発現体は個葉光合成速度の上昇,成長の促進とともに,乾燥ストレスに対して脆弱であることが報告されている。しかしアクアポリン分子は,植物において30種類以上存在しており,また植物によってもその特性が異なることから,我々は適切なアクアポリン分子種の発見・導入が重要であると考えている。本報告では,製紙原木として有用なユーカリをモデル植物とし,導入するアクアポリン分子種として,比較的水透過活性の高いダイコンのアクアポリンRsPIP2;1を選択した。実験には,2007年3月に挿し木を行った形質転換ユーカリ及び非形質転換体(背丈 約 1.3 m)を用いた。

形質転換体は,コントロールと比較して枝の伸長,個葉光合成速度,気孔コンダクタンスが高い傾向が見られた。更に,葉内コンダクタンスを推定する2種類の手法(炭素安定同位体法及びA-Ci曲線初期勾配)から,葉内コンダクタンスの上昇傾向も確認された。その他のパラメータ(Rubisco量,クロロフィル量,LMA)には大きな違いが見られなかったことから,アクアポリンを導入した結果,葉内コンダクタンス,気孔コンダクタンスが上昇することにより,個葉光合成速度の増加,成長の促進に繋がったと推測され,高成長性について期待できる結果が得られた。現在,乾燥耐性の評価方法を検討中である。


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