| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-174
本研究は冠水および傾斜環境におかれたヌマスギ(Taxodium distichum)とヌマミズキ(Nyssa aquatica)の成長や幹の構造変化を生理学的、組織解剖学的に解析することにより、両種の冠水および傾斜に対する適応機構を明らかにすることを目的とした。
実験には2年生のヌマスギ実生ポット苗、1年生のヌマミズキ実生ポット苗を用いた。苗木は(1)対照区(非冠水・非傾斜)、(2)傾斜区(非冠水・傾斜)、(3)冠水区(冠水・非傾斜区)、および(4)冠水傾斜区、の4区に分け、さらに各々の処理区でエチレン阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩(Silver thiosulfate anionic complex 以下STSと記す)を与えた処理区(STS区)、与えない処理区(No-STS区)を設け、計8区に分けた。傾斜はポットを45度に傾け、冠水はポット上端から5cmまでを冠水させた。実験期間は2009年6月下旬〜8月下旬である。実験期間中、苗木の伸長成長、直径成長量などを計測し、終了後それぞれの苗木を掘り取り、根、幹、葉に分け、乾燥重量を計測した。ヌマスギは実験開始から1、3、5、7、および15日後に、ヌマミズキは1、3、5、および7日後にポット上端から5cmの幹のエチレン放出量を計測した。また幹の一部を採取し、組織構造の観察と細胞レベルでの成長計測を行った。
以上の結果、(1)冠水により両樹種ともに幹の直径成長は顕著に増加した。(2)幹のエチレン放出量は両樹種ともに冠水や傾斜による有意差は認められなかった。(3)冠水条件下と傾斜条件下でのあて材形成側においては細胞数が顕著に増加した。
Keywords: 冠水、肥大成長、傾斜、ヌマスギ、エチレン