| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-177
ヤエヤマオオタニワタリ(Asplenium setoi)は、樹木等に付着して生育する着生シダ植物である。樹木に着生することで土壌と隔離された状態にあり、水分や栄養塩類が欠乏した環境に生育していると考えられる。また、個体上部にはホストとなる樹木等のリターが蓄積する。この蓄積リターを、流入してきた土壌動物が分解し、懸垂土壌と呼ばれる土壌を個体根部に形成する。着生シダ植物にとって、この懸垂土壌が水分や栄養塩類の供給や保持の役割をしていると考えられる。しかし、懸垂土壌が未発達な生長段階やリター供給量の少ない着生部位では、必ずしも着生生活に対する適応手段として懸垂土壌に依存できるとは限らないので、ヤエヤマオオタニワタリは貧栄養・乾燥に適応した生理生態学的特性を備えていると考えられる。本研究では、ヤエヤマオオタニワタリの葉群動態に注目し、個体の着生環境や個体サイズが、個体の葉群動態を介して、個体の物質生産に及ぼす影響を定量化することを目的とした。葉の生残・展葉と葉面積の成長の諸過程を、個体差によるランダム効果を考慮した混合モデルで分析し、葉群動態を規定する要因を明らかにし、貧栄養・乾燥環境に対するヤエヤマオオタニワタリの生長戦略を議論する。