| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-179

北海道北部におけるミズナラ堅果生産量の長期変動と堅果重の変異

*植村滋(北大フィールド科学センター),吉田俊也(同),石田亘生(同),早柏慎太郎(同)

北海道北部の森林に生育するミズナラの堅果生産数と種子重の長期変動に関するモニタリング調査の結果を紹介する。本調査は北海道北方生物圏フィールド科学センター雨龍研究林で1984年に開始され、直線距離で約6キロ離れた3つの調査地で、いずれも林冠に達する樹高18〜28mのミズナラ52個体(各調査地13〜19個体)を対象に、個体ごとの堅果生産量と総重量は現在まで25年分の観測データが得られた。また、同じ観測樹を対象に、個体ごとのランダムに抽出した堅果の平均生重量とその変異を2000年から観測している。

25年間の堅果生産数の変動パタンから、以下の2つの大きな傾向を読み取ることができた:(1)1984年から1993年までの10年間は堅果生産数が比較的少ない期間で、特に1988年以降の6年間はきわめて生産量の少ない年が連続したが、その期間の中で1987年だけは例外的に非常に豊作年であった、(2)1994年から2009年までの16年間は豊作年と不作(凶作)年がほぼ隔年周期で変動したが、その期間の中で2001-2002年は不作年が、2004-2005年は豊作年が2年連続して観測された。これらの変動パタンは調査地内および調査地間でほぼ同調していた。

母樹ごとの堅果の平均重量にも大きな年次変動が観測され、2000年以降では最も小さい0.95±0.47g(2002年)から最も大きい3.15±0.88g(2006年)まで、3倍以上の変異があった。堅果の平均重量の年次変動にも個体間、調査地間で同調する傾向が見られた。平均重量と堅果生産量には有意な正の相関がみられ、繁殖に投資可能な母樹の資源量が、堅果数と堅果サイズの両方に影響していることが示唆された


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