| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-180

雌雄同株樹木シデコブシにおける資源量に応じた性配分の差異

*鈴木節子(森林総研), 戸丸信弘(名大院生命農)

本研究では、愛知県瀬戸市海上の森のシデコブシ集団において、核マイクロサテライトマーカー14座を用いて稚樹の親子解析を行って両親を特定し、さらに葉緑体マイクロサテライトマーカーを用いて種子親と花粉親を区別した上で、種子親と花粉親の特徴を評価すること、および性配分が個体によって異なるかどうか、またどのような要因が性配分に影響を与えているかを検討することを目的とした。親子解析の結果、解析した全ての稚樹(184個体)の両親を高い信頼性で決定することができた。そのうち種子親と花粉親が区別できた稚樹は53個体であった(自殖を除く)。種子親として貢献した個体は花粉親として貢献した個体よりも、有意に、胸高直径(DBH)が大きく、相対光量子束密度(rPPFD)が高い場所に位置し、開花は早かった。また個体ごとの雌度(種子親として貢献した回数 / 種子親および花粉親として貢献した回数)は、個体のDBH、rPPFD、開花の早さ、開花量と有意な相関があり、サイズの大きい個体、明るい場所にある個体、開花の早い個体はより雌として振舞うことが示された。雄として機能するための資源投資は開花期だけに限られるのに対し、雌として機能するための資源投資は開花期から種子の成熟期まで続くため、種子親として貢献するためにはより多くの資源が必要となる。よって、上記の結果は、サイズが大きく明るい場所にある個体は資源が豊富なため、より種子親として貢献できたのではないかと解釈できる。またシデコブシは雌性先熟であることから、早咲き個体は他個体から花粉を受け取るチャンスが少なくなるため、より雄として振舞うと予想されたが、結果は逆であった。シデコブシではサイズが大きい個体ほど開花が早いことが分かっており、個体の性配分は開花フェノロジーよりも資源量に大きな影響を受けると考えられる。


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