| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-184
樹木の繁殖投資は栄養成長への資源投資との間のトレードオフの影響を受けるとされており、樹木の繁殖への資源投資量は一般的に年変動を示す。しかしながら、中には年変動を殆ど示すことなく開花・結実という繁殖への資源投資行動を繰り返す種もある。こうした年変動を殆ど示さない種における資源投資上の制約克服はどのようになっているのだろうか。本研究では、資源投資上におけるトレードオフ関係解析が雌雄異株性植物の雌雄比較によって容易となる点を踏まえ、陽性の雌雄異株性樹木であるカラスザンショウを対象として、繁殖投資量や異なるモジュール(葉〜個体)への栄養成長投資量、それらの年変動パターンを雌雄間で比較解析した。尚、調査地は京都府北部にある京都大学・芦生研究林である。
雌の当年生枝あたり繁殖投資量(7.9g)は、雄の1.7倍となっていた。個体あたり当年生枝数は雌雄間で有意に異ならなかったものの、繁殖枝率は雄の方で1.2倍多くなっていた。これらの結果は、雌の個体あたり繁殖投資量は雄よりも大きくなっていることを示していた。一方、5年にわたる個体あたりの繁殖枝率は雌雄ともにほぼ一定して雄の方が有意に大きくなっていたのに対し、幹の肥大成長量では有意な雌雄差は認められなかった。また、一年生枝上における繁殖枝率には雌雄差が認められなかった。さらに、葉については形態(当年生枝あたりの着葉枚数、葉重)に雌雄差がなかったものの、フェノロジーには落葉開始日に雌雄差があり、雌の方で有意に遅くなっていた。以上のことから、カラスザンショウは、葉フェノロジーの雌雄差はあるものの、主に個体あたりの繁殖枝率を抑えることによって雌の大きい繁殖投資を調整し、継続した繁殖投資を実現していることが示唆された。