| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-185
ユリ科の大型多年草バイケイソウ(Veratrum album)は広域に開花が目立つ年と目立たない年がある。そのため本種は個体群間で同調して一斉開花する性質を持つ可能性がある。発表者はバイケイソウの開花量の年変動と地理的な同調性を調べるため、北海道道央域の8ヶ所の調査地に10×10mの調査区を各1〜2個(計10区画)設置して、2002年〜2008年の夏期に調査区内の開花ラメット数を計測した。
調査の結果、各調査地での開花量年変動は大きく、一斉開花とみなせる現象が確認された。調査期間中の開花パターンには3種類が認められ、1)2002年に大規模な開花を行った後、2007年と2008年のいずれか、または両年に中規模な開花を行うタイプ、2)2002、2004と2008年にそれぞれ小〜中規模の開花を行うタイプ、3)2002年に中規模な開花を行った後、2008年に大規模な開花を行うタイプに分類された。これらの年以外にも少数のラメットが開花することがあった。
次に、調査区間で開花の同調性を評価した。各調査区での開花量の年変動を相対値化した上で、2つの調査区間における各年の相対開花ラメット数の差の二乗和の逆数を開花パターンの類似度(開花同調性)の指標とした。2つの調査区間において開花パターンのタイプが異なる場合は、地理的に近距離であっても開花の同調性は低かった。また、調査区間の距離が離れるにつれてさらに同調性が低下した。一方、開花パターンのタイプが同じ調査区間では開花の同調性は高かったが、地理的距離が増すにつれて同調性が低下する傾向にあった。これらのことから、バイケイソウの一斉開花パターンは個体群間の距離を反映した要因と距離とは無関係な要因の両方によって決まっているものと考えられた。今後、個体群の環境条件や遺伝的性質に着目して開花パターンの決定因子を解明したい。