| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-186
繁殖器官の成長過程における死亡は種子数に大きな影響を与える。その死亡要因が予測可能である場合、要因の効果を低下させるメカニズムを発達させることが種子数の低下を軽減する上で有効であろう。アオモリトドマツ球果の成長過程において、生育地によっては、動物の摂食による雌花芽の死亡数が雌性繁殖器官の死亡数で最も大きな割合を占める。こうした生育地で動物の摂食に予測可能なパターンがあるかどうかを調べ、雌花芽生産で被食率を低下させるメカニズムが発達する可能性について考察した。調査は奥羽山脈岩手山西方の姥倉山で行った。林冠に達していた9個体を対象に、1995年から1999年までの雌花芽生産数と被食数を一次枝ごとに計測した。主幹から分枝して3年後から12年後に相当する一次枝において、主軸、主軸から分枝後2年目までの二次、三次の枝で雌花芽の状態を確認した。調査対象期間では、1995年と1998年に雌花芽のほとんどが生産された。一次枝あたり、および個体あたりでの雌花芽被食率にかかわらず、1996年と1999年には雌花芽はほとんど生産されなかった。一次枝あたりの雌花芽被食率は、一次枝の出現年次とは関係がなかった。また、個体あたりの雌花芽を着けた一次枝数とも関係がなかった。その一方で、個体あたり雌花芽数の多い個体で低い傾向があった。本種では、雌花芽が被食を受けた翌年には補償的に雌花芽を生産せず、2年連続で餌資源として利用されるのを防いでいると考えられる。雌花芽の樹冠内での空間配置に関しては、様々な年次に出現した一次枝上で被食を受けるため、特定年次の一次枝への集中的な配置はしないと推測される。一方、個体あたり雌花芽数を豊作年に集中して増やすことによって、結果的に球果数を増大させていると示唆される。