| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-197
開花時期の決定は植物の繁殖成功に直結する重要な適応形質であり、日長や気温の季節変動に応答して変化する。モデル植物シロイヌナズナでは、花成制御の遺伝子ネットワークの解明が進み、低温に対する開花応答の変異が、花成抑制因子FLC(FLOWERING LOCUS C)の発現量という量的な要因に集約できることが明らかとなりつつある。タチスズシロソウは異質倍数性起源の四倍体で、シロイヌナズナ属の二倍体種が親種である。本種は、低温によって開花が促進されるが、低緯度の集団ほど、長期の低温を必要とする集団間変異があることがわかっている。本研究は、開花応答性の集団間変異を対象に異質四倍体における適応の遺伝的基盤を明らかにすることを目的とした。シロイヌナズナではFLCが実生時から発現し、長期の低温よって発現が抑えられ開花に至ることが分かっている。本研究の結果、タチスズシロソウではAkwFLCの初期転写量は集団間で有意な差がみられたが、AkwFLC転写量の変異は、開花までの日数における変異を説明しなかった。しかし、低温処理に対するAkwFLC転写量の低下速度を比較した場合、早咲き集団で低下速度が速く、遅咲き集団で低下速度が遅いことが明らかになった。このことから、AkwFLC転写量の低温応答の程度が開花の変異を説明する可能性が示唆された。以上のことからAkwFLC転写量の低温応答に変異をもたらすと考えられる遺伝子群に対して解析を行った。また本種は異質四倍体であることから異なる親種由来の2タイプのAkwFLCをもつため、その2タイプを分けて定量することを試みた。