| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-198
気候変動による生態系への影響が懸念され、とくに影響を受けやすい高山帯において長期的なモニタリングの必要性が高まっている。近年、山岳地域においてもインターネット環境の整備が進み、観光を目的としたデジタルカメラ画像をホームページ上で公開しているところが多くなった。そこで本研究では立山室堂山荘と信州ブロードバンドネットワークの画像を用いて、高山帯の融雪および植物の展葉や紅葉などのフェノロジーを解析した事例を紹介する。
JPEG形式の画像から赤緑青(RGB)の画素値を抽出し、積雪部分を判別して対象画像内の積雪面積を調べた。その結果、積雪画素数の時系列変化から融雪の状況が数値化され、それぞれの場所とその方位により異なる融雪パターンが見られ、年による融雪速度の差が認められた。また、植物群落部分のRGB値から植物の色素の変化に対応する植生指標を算出することにより、植生のフェノロジーを解析した。得られた植生指標の変化から群落スケールでの展葉や紅葉の時期を把握することができた。2008年に比べて2009年の紅葉時期が早いなどフェノロジーの年々変動も明らかになった。
本研究では大量の画像を迅速に解析するアルゴリズムを開発し、群落スケールの植生フェノロジーを把握して地点間で客観的に比較できることを示した。広域で詳細な生態系モニタリングネットワーク構築に向けて、今後さらに多地点でのデジタルカメラによる定点観測の展開と解析手法について検討したい。