| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-205

雌雄異株の樹木アオモジの結実と種子散布における空間構造の影響

*鈴嶋康子,川口英之(島根大・生物資源)

樹木の分布が有性繁殖によって拡大するとき、雌雄同株の樹木に比べて、雌雄異株の樹木では、個体の空間分布による影響は顕著になると予想される。しかし、雌雄異株に注目して分布拡大が研究された例は少ない。本研究では、国内移入されて分布が拡大している雌雄異株の落葉小高木アオモジを対象種として、雌雄のサイズ構造と空間構造が結実と種子散布に対して影響するかをしらべた。

鳥取県大山町、妻木晩田遺跡内の約105haを調査地とし、アオモジの位置、性、サイズをしらべた結果、雄201本、雌278本、非着花48本、合計527本、雄/雌比=0.72、であった。胸高直径3cm以上はすべて着花していた。 雌15本について花序あたりの花数を求めたのち、観察枝を3本ずつ選び1週間ごとに花序の残存数を記録し、残存する花序数が安定した7月から果実数も記録して結果率を求めた。成熟した果実の数を結果数とし、雌花数に対する結果数の割合を結果率とした。成熟した果実には種子が1個入っている。結果率は0から39%の範囲にあり、平均8.7%であった。直径3cm以上の雄が25mの範囲内にある雌とない雌とに分けると、雄が近くにない雌の結果率が有意に低かった。果実が成熟した8月にトラップを3個ずつ設置し、落下した果柄と捕食されずに落下した果実を数えて、鳥により捕食された果実の数と結果数に対する割合を推定した。果柄数を結果数とみなした。トラップあたりの結果数は雄が近くにある雌のほうが有意に多く、捕食された果実数も有意に多かった。結果数に対する捕食された果実数の割合には有意な差はないことから、結果率の高さが結実数と散布数の有意な増大をもたらしたと考えられる。これらの結果により、アオモジにおいて、雌雄の空間分布という個体群の空間構造が繁殖に影響していることがわかった。


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