| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-206
マタタビは形態的には雄性両全異株である。しかし、両性株の花粉が機能していないので、実質的には雌雄異株であると考えられてきた。雌雄異株や雄性両全異株がどのように進化し維持されてきたかを考えるための基礎的情報を得るため、マタタビの機能的な性表現を再検討するとともに、雌雄の繁殖コストの比較を行った。また、マタタビの花にはマタタビミタマバエが寄生するとゴールが形成されることが知られており、繁殖コストに影響を与えている可能性がある。そこで、繁殖コストを算定した上で、ゴール形成がマタタビの繁殖に及ぼす影響を検討した。
hand pollinationによる自家受粉や両性株間の他家受粉の結果、両性株の花粉ではほとんど結実しなかった。花粉発芽実験の結果、両性花の花粉は発芽がまったく見られなかった。花粉の形状を観察したところ、両性花の花粉は発芽孔が未発達であった。これらのことから、マタタビは機能的には雌雄異株と結論できる。
花・実の数と乾燥重量の測定によって、繁殖コストをシュート単位で検討した。花期の繁殖コストは雄の方が高いが、結実を含めた繁殖全体のコストは雌の方が高かった。ゴールは雌花だけでなく、雄花にも見られた。ゴールの乾燥重量を計測した結果、ゴールは雄花の23倍もの重量があり、雌雄間に有意な差は見られなかった。また、ゴールの有無は個体によってばらつきがあった。
雄株は本来、花期で繁殖に対する投資を終えているが、寄生によって不要な投資を強いられている可能性がある。そのため、ゴールの有無によって繁殖器官や栄養成長に差が出ていることが考えられる。