| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-207

雌雄異株低木シロモジの生理的統合性における性差:環状剥皮処理を用いた野外実験による検証

*五十君友宏(名大・農),中川弥智子,松下通也,渡辺洋一(名大院・生命農)

雌雄異株性植物において、繁殖、成長量、クローン生長の程度に性差が知られている。また、クローン植物では、ジェネット内の物理的に連結しているモジュール間で同化産物や栄養塩類・水分などをやりとりする現象(生理的統合性)が知られており、ジェネット(個体)としての適応度を高める戦略であると考えられる。しかし、これまでジェネット全体での生理的統合性の性差に関する研究は行われていない。そこで本研究では、ラメット(幹)間の生理的統合性に性差が存在するかを検証するため、複数の幹からなる発達した株構造をとる雌雄異株低木シロモジを対象種として、株内の主幹に対する環状剥皮処理が主幹自身および株内の他の萌芽幹の成長・繁殖に及ぼす影響を処理間・雌雄間で比較した。

その結果、樹高1.3m未満の萌芽幹の地際直径成長量は、コントロール株よりも処理株の方が小さかったことから、剥皮処理により株内主幹から他の萌芽幹への同化産物転流が遮断され成長が悪くなったと考えられた。株内主幹の肥大成長量はコントロール株よりも剥皮処理株の方が、地際直径においては小さく胸高直径では大きかった。さらに、処理の影響の程度に性差が見られ、剥皮処理群において雌株よりも雄株の主幹胸高直径成長量が大きかった。以上の結果から、シロモジでは株内での同化産物転流に性差が存在することが示唆された。また、株内主幹の花芽生産数は雌株より雄株の方が多く、さらに雄株では処理株の方がコントロール株よりも多かった。以上より、ジェネット全体での生理的統合性のパターンに雌雄で違いがあり、雄では剥皮処理によって根方向へ転流されなかった同化産物が花芽生産に利用されたのではないかと考えられた。


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