| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-213
つる植物は自重支持を外部に依存する。この成長様式は、自重支持に必要な茎肥大への投資を葉量増加や茎の伸長にまわし、効率良い生産と伸長成長を行う戦略であると解釈される。ここから、つる植物は自立樹木よりも成長が早く、短期間で林冠に到達すると考えられている。しかしながら、これまで野外における長期的な成長過程についての記載データがないため、その成長特性に関して未知の部分が多い。本研究では冷温帯の木本性つる植物3種(サルナシ、マツブサ、イワガラミ)を採取し、地上部重量、高さ等と年輪数(齢)から野外における成長速度を求め、それを樹木の先行研究と比較することにより、つる植物の成長特性を明らかにすることを目的とした。
結果、つる植物は樹木に比べ小さな地上部重で高い位置に到達しており(高さ10mの個体の地上部重はつる植物2 kg、樹木は20 kg)、同じ地上部重の樹木よりも葉の割合が高かった(地上部重10 kgの個体の葉の割合はつる植物0.1、樹木は0.03)。従ってバイオマスを基準に考えるとつる植物は高さ成長の効率が良いと言えた。一方、齢を基準に用いると、高さ10 mのつる植物個体の樹齢は20~40年で、高さ成長の速度は樹木と同程度、つる植物の林冠個体の地上部重は、同齢の林冠樹木の1/10程度であった(樹齢50年でつる植物5~30 kg、樹木50~300 kg)。つる植物は葉の割合が高く、サルナシなどは常に明るい場所で成長することから高い生産性が予想されるが、実際に地上部に固定するバイオマスは少ないことになる。この点について、林冠に到達した個体の全茎長が、毎年の茎伸長量の積算値の2割程度に過ぎなかったことから、つる植物は地上部のターンオーバーが早いこと、固定したバイオマスを素早く捨てていくことによって、見かけ上効率の良い成長を行っていることが示唆された。