| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-247
富士山の南東斜面では、火山噴火後の一次遷移に沿って植生がパッチ状に生育してできる島状群落を見ることができる。本研究ではこの島状群落の発達に伴う土壌微生物群集の炭素源資化性の変化を調べ、それを指標として微生物群集構造の変化を明らかにすること目的とした。炭素源資化性の解析には、市販のBiologマイクロプレートを用いた。これは96ウェルマイクロプレートの各ウェルにそれぞれ単一の炭素源と発色試薬が含まれており、微生物がその炭素源を資化すると発色するように調整されている。
2009年7月に、富士山南東斜面の裸地(Stage B)、イタドリからなる島状群落(Stage I)、イタドリ以外の草本類も混在する島状群落(Stage II)、中央部にカラマツが存在する島状群落(Stage III)、そしてこれらの島状群落が存在するエリアに隣接するカラマツ林(Stage F)から鉱質土層を採取した。土壌懸濁液を希釈したものをBiologマイクロプレートに分注し、25℃で7日間培養して各ウェルの吸光度を測定した。
土壌微生物群集が資化することができた炭素源の種数(発色したウェルの数)はStage Bで最も少なく、Stage B―IとI―II間で大きく増加したが、Stage II以降では大きな変化は認められなかった。炭素源資化パターンのクラスター解析では、遷移初期(Stage B及びStage I)とそれ以降で大きく異なっていることが示された。以上の結果より、富士山の火山荒原においては、土壌微生物群集の炭素源資化性および群集構造の大きな変化は遷移の比較的初期に起きていることが示唆された。