| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-254
病原性をもたずに植物組織内で共生する微生物を内生菌という。内生菌の進化や生態的機能については,イネ科植物を中心に多くの研究がなされてきた。しかし,イネ科以外の植物については,内生菌との共生がどれくらい一般的で,それが宿主の適応度にどのような影響を与えているかについては,ほとんど解明されていない。
本研究は,日本の温帯地域の主要樹種であるブナを対象に,葉に棲息する内生菌の多様性を明らかにするために行ったものである。 調査は,青森県の世界遺産白神山地核心地域で行った。1999年以来,環境省のブナ林モニタリングサイトの3カ所から6月と9月の2回,ブナの葉をサンプリングした。 研究室に葉を持ち帰り、表面殺菌を行った後, 約1cm平方に切り取った葉片を培養し内生菌を分離した。真菌類の培養にはCMM培地を,細菌類ではN培地を用いた。分離した菌は,外部形態から分類するとともに,系統解析を行うために菌体からDNAを抽出した。同時に,真菌と細菌を特異的に増幅するプライマーにより葉組織から直接内生菌のDNAを増幅し,DNAフィンガープリント法(T-RFLP法)により,多様性を解析した。6月の葉では,外部形態の異なる真菌12種、細菌11種、計23種が分離された。9月の葉では,真菌22種、細菌25種の計47種が分離された。これらの結果から,ブナの葉には多くの内生菌棲息し,季節によってその構成が異なることが示された。