| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-259

オコタンペ湖に生息する大型糸状性細菌Thioplocaの諸特性

*根本富美子, 小島久弥, 福井 学 (北大・低温研)

大型糸状性硫黄酸化細菌Thioplocaは、細胞が際立って大きく、硫黄と硝酸を細胞内に蓄積するという特徴を持つ。これらの特徴に加え、特定の条件下で高密度で生育するため、環境中の物質循環に対する寄与が大きいと考えられる。しかし、Thioplocaの純粋培養は未だ得られていないため、詳細な生理学的特性について不明な点が多い。Thioplocaは海洋や湖沼の堆積物中に生息し、日本では琵琶湖と小河原湖において生息が確認されている。湖沼のThioplocaの現存量は海洋と比較すると少ないが、湖沼は閉鎖性水域であるため、物質循環への影響がより大きいと考えられる。しかし、湖沼のThioplocaに関する知見は海産種と比較して特に少ない。本研究では、北海道千歳市に位置する淡水湖であるオコタンペ湖において新たに発見されたThioplocaについての基礎的な知見を得ることを目的とした解析を行った。

オコタンペ湖のThioplocaの形態は、小河原湖のThioplocaに類似していた。オコタンペ湖のThioplocaの16S rRNA遺伝子配列の決定と系統解析を行った。その結果、オコタンペ湖のThioplocaは、他の淡水湖沼に生息するThioplocaよりも、汽水湖である小河原湖のThioplocaと近縁であった。また、Thioplocaの近縁種であるThiomargaritaでは、リン酸蓄積能を持つことが報告されている。リン酸蓄積細菌は、好気的条件下で吸収したリン酸をポリリン酸として細胞内に蓄積し、嫌気的条件下でそれをリン酸として放出する。そこで、Thioplocaのリン酸蓄積能の検証のため、ポリリン酸の染色および嫌気的条件下におけるリン酸濃度の時間変化の測定を行った。その結果、Thioplocaがリン酸を蓄積しているという確証は得られなかった。


日本生態学会