| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-306
西オーストラリア州内陸部は、年降水量200mm前後の乾燥地であり、その自然植生はアカシア属樹木を中心とした疎林が優占している。しかしながら、谷すじのワジ(涸れ川)沿いなどごく一部の地域ではユーカリ林が成立し、周辺地域と比べて現存量の大きい森林が維持されている。これらの地域の表層土壌は、ごくまれに発生する集中的な降雨時を除けば周辺と同様に非常に乾燥しており、実生の定着はほとんど見られないため、主に萌芽更新によって森林が維持されていると考えられる。そこで、これらの林分の更新パターンを解明することを目的に、野火などのカタストロフィックな撹乱を模した伐採を行った。2002年に予備調査として7個体、2006年に50個体の伐採を行い、個体の萌芽再生の指標として各萌芽幹の長さと直径、個体全体の樹高と樹冠サイズを測定した。
追跡調査の結果、伐採から3ヶ月後には75%、6ヶ月後には全個体で多数の萌芽幹が発生し、3年後までの個体の死亡率は0%だった。一方、個々の萌芽幹の死亡率は幹サイズに強く影響された。特に小サイズの幹は高い回転率を示し、幹長50 cm以下の萌芽幹の1年後の生残率は30%以下であった。また、伐採時に約14mだった樹高は3年間で最大約7mまで回復したが、萌芽個体のバイオマス成長は、同地域において潅水条件下で育成された苗木と比べて小さかった。このことから本調査地付近におけるユーカリの成長は、発達した根系を再利用可能な萌芽個体であっても、水分条件によって制限されていると考えられた。