| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-309

ニセアカシア林内における土壌シード・バンクの発達要因−林分構造と養蜂業の影響−

*真坂一彦(北海道林試),山田健四(北海道林試),小山泰弘(長野県林業総合センター),佐藤創(北海道林試),今博計(北海道林試),鳥田宏行(北海道林試)

北米原産のマメ科高木種ニセアカシアの種子は,物理的休眠によって土壌シード・バンクをつくり,裸地が出現した際にいち早く更新すると考えられている。しかし,土壌シード・バンクの形成過程についての知見は,原産地を含めてもほとんどない。

ニセアカシアは寿命が比較的短い樹種であり,樹齢30〜40年生までは旺盛に開花し,その後,成長の衰退とともに繁殖力も減退する。また,種子の物理的休眠性の度合いも様々で,きわめて弱い休眠性を示す種子もある。そのため,埋土種子量は,林齢よりはむしろ,林分の成長量に影響を受けると予想される(仮説1)。一方,ニセアカシアは養蜂業の主要蜜源植物であり,ミツバチの供給は,受粉過程において花粉制限を撤廃していると予想される。すなわち,養蜂業者に利用されている林分ほど,埋土種子量が多いと予想される(仮説2)。

仮説を検証するため,北海道の道央,日高,渡島の3地域で計23林分,長野県で2林分のニセアカシア人工林を対象に,林内に20m×20mの調査区を設定して成長量(胸高断面積合計;BARp)を測定した。また,埋土種子量を推定するために調査区内の10地点から土壌サンプル(直径20cm×10cm深の円筒状)を採取し,土壌中のニセアカシア種子を選別した。1林分当たりの最大値は13757.4個/m2,最小値は6.4個/m2である。

土壌サンプルあたりの種子数に与える各変数の影響を,一般化線形混合モデルによって評価した。このとき,地域と各調査林分をランダム効果,林齢とBARp,養蜂業の利用状況を固定効果とした。解析の結果,土壌サンプルあたりの種子数には,BARpと養蜂業の利用状況の2つの変数が貢献していることが明らかになり,仮説は支持された。


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