| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-310

ヒバ前生稚樹密度がヒバ林択伐後の更新成否に与える影響

*櫃間岳(森林総研東北), 太田敬之(森林総研), 杉田久志, 森澤猛, 八木橋勉(森林総研・東北)

ヒバは北東北の主要な木材資源の一つであるが、資源は減少しておりその保続的利用が求められている。ヒバは主に天然林の択伐で管理されており、資源減少の主要因は天然更新と伐採量の収支バランスの不良だと考えられる。特に、択伐後の稚樹の定着や成長には場所による差が大きく、その要因の解明が求められている。ヒバ択伐後の稚樹の更新成否に影響する要因を探るため、択伐率と択伐後のヒバ稚樹密度の異なる林分において、択伐前後の林分構造、林床の光環境と植生の変化を調べた。調査は、青森県下北半島および岩手県北上山系のヒバ天然林にある択伐後約15年の2つの施業地で行った。

ヒバ前生稚樹密度は同一林分内でも場所による差が大きかった。前生稚樹密度の高いところでは、択伐後もヒバの本数密度が高かった。択伐率が高い林分では択伐後に広葉樹の幼樹本数が増加した。この林分では、択伐後の林床の日射量増加はわずかで、樹高30cm以上の稚樹の新規定着は広葉樹に限られていた。択伐率の低い林分では、高択伐率林分より広葉樹幼樹の新規参入本数が少なく、低木性広葉種の参入はほとんどなかった。この結果、林床の日射量増加は択伐率の低い林分の方が高い林分より大きかった。また、低択伐率林分では樹高30cm以上のヒバ稚樹の新規定着は、前生密度が低い場所にも見られた。

これらの結果より、ヒバ択伐後の稚樹の更新には、ヒバ前生稚樹密度と択伐率が重要な要素であり、少なくとも、ヒバ前生稚樹密度の低い林分に高率の択伐をすべきでないこと、ヒバ前生稚樹密度が高い場所は択伐後もヒバ密度が高く更新サイトとなる可能性が高いこと、が示唆された。


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