| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-311
放置状態となった竹林内は、植生が乏しく生物多様性の低下をもたらすことが指摘されている。近年、畑地や周辺森林(二次林や針葉樹人工林)への竹(とくに、モウソウチク)の侵入が問題となり、皆伐等による拡大防止対策が講じられている。しかしながら、竹林の皆伐は数年間の継続によって他の更新樹木の消失を招き、結果的に草地化してしまうことが懸念される。この研究では、様々な施業履歴を持つ放置竹林で埋土種子および林内の植生を調べ、その生態的特徴を明らかにすることにより、竹林を周辺植生へ早期に回復される方法について考察した。3地域のモウソウチク林で20m×20mの方形区を合計9箇所設定し、樹高2m以上の木本の本数をカウントすると共に、方形区内に2m×2mの小方形区をほぼ均等に16箇所設け樹高2m未満の木本の本数をカウントした。また、小方形区内では草本の被度も求めた。さらに、埋土種子を検出するために、各地域1箇所の方形区内で縦20cm×横30cm×深さ5cmの土壌ブロックをランダムに10箇所から掘り取り持ち帰って、プランター内で3〜11月まで蒔きだし試験を行った。埋土種子による蒔きだし試験の結果、カラスザンショウ・アカメガシワといった先駆性の強い樹種が高密度で出現した。また、現地での植生調査の結果、近年まで筍採取を行うために管理を行っていた林分ほど光環境が良好で周辺広葉樹林に共通した種が多くみられ、放置状態が長く続いたと思われる林分ほど暗く植生が乏しかった。このことから、竹林の皆伐は先駆性の強い埋土種子を形成する樹種群による植生へ変化させ、間伐などにより管理された竹林では周辺植生に近い植生へ変化することが示唆された。