| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-312
自然林の動態について、たとえ極相林であっても、安定的な平衡点に達して不動なことはごく稀で、実際には林冠や地表面のかく乱からの種々の再生段階にある林分を内包して変動しつつ、全体として動的平衡状態にあると考えられている。しかし、様々な極相林において、林分の変動の大きさや時間間隔が実測された例は少なく、上記のような理解も、依然としてモデル的理解の範疇にとどまるものである。私たちは、宮城県栗駒山の成熟したブナ林(低木型林床)に設置した1ha調査区において1989年から2009年までの20年間に、胸高直径2cm以上の樹木個体(低木を含む)を対象に計6回(1989、1993、1996、2000、2004、2009)、モニタリング調査を継続してきた。このデータに基づき、今回は胸高断面積合計、幹密度、直径階分布などの変化について解析した結果について報告する。まず、1haの胸高断面積合計は1989年の36.19m2から2004年の38.662までほぼ直線的に増加した後、2009年には37.852に減少した。一方、1haあたりの幹密度は、1989年の3,144本から1996年の3,388本までゆるやかに増加したのち、急激に減少して2009年には2,352本となった。さらに直径階分布では、直径階ごとに一方向的な増加または減少があり、小径木(2-4cm)は大きな減少、中径木(4-8cmおよび8-16cm)は単調増加、大径木(32-64cm)は単調減少、超大径木(64-128cm)は単調増加であった。これらの変化のうち小径木および中径木の変化は、種ごとに見ても多くの種に共通していた。