| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-313
一斉攪乱後の森林の更新過程では、若齢段階における樹種間の成長特性の差異が、林分構造の発達や種組成の変化を規定する上で重要と考えられる。本研究では、スギ人工林皆伐後に更新した若齢常緑広葉樹林において、主要樹種の成長特性を比較した。暖温帯常緑広葉樹林においては一般に萌芽更新の重要性が高いことから、複数の幹を持つ個体の挙動に注目して解析を行なった。1998年に皆伐が行われたスギ人工林の跡地(高知県室戸市)に、3箇所の10m×10m調査区を設置した。2003年、2006年〜2008年の12月に、調査区内の胸高直径2cm以上のすべての幹の樹高と胸高直径を測定し、どの個体に属するかを記録した。2003年時点の測定対象個体の80%以上は常緑広葉樹によって占められており、中でもシロバイ、シイ、アラカシの3樹種が特に高い優占度を示した。これら3樹種の個体のうち80%以上が複数の幹から構成されていた。2003年時点の平均樹高・平均胸高直径は、シイで出現樹種中もっとも高い値を示した。主要3樹種(シロバイ、シイ、アラカシ)では、2003年から2008年の期間中に死亡個体はほとんど生じなかったが、新規加入個体(新たに測定対象サイズに達した個体)の発生率はアラカシで高かった。個体内の幹の樹高・胸高直径のばらつきは、シイ、シロバイ、アラカシの順に大きかった。さらに、シイでは他の2種に比べ、期間中の個々の幹の樹高・直径成長量が初期の幹サイズや個体内での幹サイズの順位に強い影響を受けていた。以上の結果から、若齢林における樹種の成長パターンと生活史特性との関係および、予想される林分構造の変化について考察する。