| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-314

白神山地高倉森における森林群集の構造

*鳥丸猛(弘前大・農生),赤田辰治(弘前大・遺伝子),石田清(弘前大・農生),松田修一(弘前大・遺伝子),成田真智子(弘前大・農生),牧田肇(白神マタギ舎),檜垣大助(弘前大・農生)

山地において認められる起伏に富んだ地形は多様な環境を形成する。そのような不均一な立地環境に対して樹木個体群は異なる応答を示すため、森林群集の構造はしばしば地形と相関を示すことが知られている。わが国の代表的な森林である冷温帯ブナ林の林分構造については、これまで林冠ギャップの形成による森林の上層環境の不均一性との関連性が注目されてきたが、一方、地形に起因する林分構造の不均一性を検討した試みは少ない。そこで、本研究は急傾斜地に成立した冷温帯ブナ林における森林群集の構造を記述し、主要構成樹種の空間分布に及ぼす地形要因の影響を明らかにすることを目的に行った。2009年に世界自然遺産白神山地を含む青森県の高倉森一帯のブナ林に1.4ha(100m×140m)の固定調査区を設置して地形測量を行った結果、平均傾斜度は24.6度、最大傾斜度は45.3度であった。胸高直径5cm以上の幹を対象に毎木調査を行った結果、27樹種が認められた。幹密度上位6種で全体の約74%(ハウチワカエデ、ブナ、イタヤカエデ、タムシバ、マルバマンサク、コシアブラ)、胸高断面積合計上位6種で約93%(ブナ、イタヤカエデ、ハウチワカエデ、ナナカマド、サワグルミ、ウダイカンバ)をそれぞれ占めていた。調査区の地形属性と主要構成樹種の空間分布を解析した結果、ハウチワカエデとマルバマンサクは尾根上部の急斜面、コシアブラは尾根上部の平坦地、ブナは山腹斜面上部の急斜面に多く分布し、イタヤカエデは同下部の急斜面に多く分布する傾向があった。さらに、本報告では林冠状態の調査結果を加味し、上層と下層の不均一性が作り出す複合的な環境状態と群集構造の関連性について検討を行う。


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