| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-319
自然撹乱は森林群集の動態に対して重要であり、自然撹乱のうち台風等による風倒は根返りや幹折れなどの構造を林内に形成する。根返りによるマウンドやピットは特に先駆性樹種にとって更新適地であることが報告されている。同所的に生育している樹木でも撹乱後の更新パターンは樹種間で異なると考えられ、さらに同一樹種でも根返り地における更新は開放度等の環境条件の違いによって異なる事が予想される。この研究は、根返り部分と閉鎖林冠下での更新状況の比較、および根返り部分における環境条件と更新状況との関係を明らかにすることを目的とする。
調査は2004年の台風によって風倒被害を受けた北海道札幌市のミズナラ、イタヤカエデ、シラカンバが優占する落葉広葉樹林で行った。2009年に根返り33カ所のマウンド、ピット、ピット脇の林床、および閉鎖林冠下44カ所に1mX2mの調査枠を設け、樹高5cm以上かつ胸高直径5cm以下の木本種を対象として種名、樹高、被度を調査するとともに、各マウンドにおいてrPPFDを測定した。
ミズナラ、イタヤカエデは各立地で出現しており、これらの多くは撹乱前から生育していた稚樹の生残りと考えられた。一方、シラカンバはほとんどが撹乱後に定着した個体と考えられ、閉鎖林冠下には出現しなかった。タラノキ、ドロノキ、エゾニワトコ、エゾイチゴ等の先駆性の樹種は根返り部分にのみに出現し、閉鎖林内には出現しなかった。撹乱後に更新したと考えられるマウンド上のシラカンバに関して、発生本数はrPPFDと有意な相関は認められなかったが、被度と最大樹高は正の相関が認められた。マウンド上のミズナラとイタヤカエデに関しては、ミズナラの最大樹高で正の相関が認められた他は有意な相関は認められなかった。これは、撹乱前に既に成長していた前生稚樹の影響が大きいためと考えられた。