| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-324

衰退林におけるミヤコザサの除去がトウヒ稚樹の生残と成長に及ぼす効果

*木佐貫博光, 工藤壮史, 福地涼, 中井亜理沙(三重大生資)

森林が衰退し防鹿柵の設置によって繁茂した大台ヶ原正木峠のミヤコザサ草原において,ササの地上部除去がトウヒ稚樹の生残と成長に及ぼす影響を解明するために,防鹿柵内にササ除去区(0.6ha)と対照区2区(各0.1ha)を設置した.対照区では測定以外何も行わず,ササ除去区では,夏期にササの地上部除去を行った.トウヒ稚樹を対象に樹高,樹冠長,1年間の伸長量を測定し,稚樹の相対伸長成長率を求めた.ササの稈高と被度,ならびに稚樹の梢端上部における相対光合成有効放射束密度を測定した.ササ除去区では稈高よりも低い稚樹の枯死率が低かった.ササの除去は翌年のササの稈高と被度を低下させ,光環境を改善した.前年に高いササに覆われていた稚樹ほどササ除去後の成長量が低下した.ササの除去はササの下層に生育する稚樹の生残率を高めるものの,光環境の変化が大きければ稚樹の伸長成長を抑制することを示唆する.トウヒ稚樹の成長促進のためには,より小面積規模のササ刈りが適しているのかもしれない.


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