| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-330
Janzen-Connell仮説は温帯林においても種多様性を説明する重要な説とみなされている。この仮説は以下のようなものである。ある樹木においてその近傍に落下した種子や実生はその種に特異的な植食者や病原菌によって加害され、その結果母樹周辺には加害を受けない他種が替わりに侵入し、結果的に多様性が増す。しかしながら、種特異的な天敵による加害が種の置き換わりに影響を与えているかを実際に野外で調査した研究は殆どなく、母樹周辺において他種が自種よりも生存率が高いかは分かっていない。本研究は冷温帯落葉広葉樹林に生育するミズキ(Cornus controversa)を対象にミズキ輪紋葉枯病が、ミズキ母樹下における実生の置き換わりを引き起こしているかどうかを調査した。
ミズキ母樹付近では同種、他種問わず輪紋葉枯病の罹患が見られた。しかし、ミズキ実生は母樹付近では激しい病害を受けて死亡し、最大で2年生・高さ10cm程度のものが僅かしか存在しなかった。一方、ミズナラやウワミズザクラなど他種の実生は輪紋葉枯病の病斑が広がることなく、ミズキ母樹付近においても20年生で2mにまで成長する個体も見られた。