| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P1-332

照葉樹人工林の初期動態-樹種特性と個体密度の影響-

*宮内大策(横国大・院・環境情報),川原照彦(西日本技術開発(株)),藤原一繪(横国大・院・環境情報)

1970年代以降,生態学的な知見に基づくエコロジー緑化手法によって,埋め立てや山地造成によって人工的に地形が改変され造成された緑地が数多く存在し,照葉樹を中心とした人工林形成が行われてきた.これは,その立地に本来生育する高木になる樹木の幼木を混植し,立木密度の高い樹林を作りだすものである.一般に,単一種植栽では遺伝的・構造的多様性が低いために病虫害や自然攪乱を受けやすいなど様々な負の影響があるが,混交林では遺伝的・構造的・機能的な多様性が高いことによって,それらへの抵抗性が高いと考えられている.一方で,エコロジー緑化には林冠木の密生などの問題点が指摘されている.そこで,植栽方法や管理方法,将来的なデザインへの提言を行うために,植栽初期の植栽地を対象に植栽木の成長や生存・死亡などに影響を与える要因を明らかにすることを目的とした.

調査地は宮崎県宮崎市田野町で,タブノキ・シラカシ・アラカシ・スダジイ・イチイガシ・イスノキなど68種が2004年10月と2005年10月に植栽されている.10m×10mの調査区を2006年1月に4箇所設置し,個体位置の記録などの毎木調査を行い,2006年11月・2007年11月・2008年11月・2009年11月に再調査を行った.

調査区には65種1472個体が確認され,個体数は多い順にタブノキ・アラカシ・シラカシ・コジイ・スダジイ・イチイガシで,2009年時点での平均樹高は255cm,地際直径は32mmとなっていた.ヤマザクラ・スダジイ・コジイの成長が良く,イスノキ・アラカシ・イチイガシの成長は良くなかった.また死亡率はイスノキ・イチイガシで低く,シロダモ・コジイ・タブノキの死亡率が高かった.個体の死亡要因は初期サイズの影響が大きく,また樹種による違いが見られた.


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