| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第57回全国大会 (2010年3月,東京) 講演要旨 |
一般講演(ポスター発表) P1-339
コナラ林の多くはかつて薪炭林として利用されていたが、燃料革命以後はほぼ放置されてきた。本研究では、このように放置されているコナラ二次林を対象とし、20年間の長期的なデータから、林分動態と優占種であるコナラの個体群動態を明らかにすることを目的とした。
本研究では岡山市ダイミ山(34°41′N、133°55′E、標高161m)の北斜面中部に位置する林齢約60年のコナラ二次林を対象とし、1987年に面積0.7haの調査区を設置し、1987、1992、1998、2002、2007年に胸高直径≧5cmの幹を対象として樹種、幹の生死、位置を記録し、胸高直径を測定した。
1987から2007年、すなわち林齢が約40年生から60年生の20年間で、林分全体の個体数は621本ha‐1から830本ha‐1に増加し、胸高断面積合計は18.8m2ha‐1から26.8m2ha‐1に増加した。常緑樹種の個体数と胸高断面積が増加するとともに、殆どの落葉樹種では個体数が減少し、林分は常緑広葉樹林に遷移しつつあると考えられる。コナラの個体数は273本ha‐1から141本ha‐1に減少したが、胸高断面積合計は14.4m2ha‐1から17.5m2ha‐1に増加し、その相対値は76.6%から65.4%へと変化した。単幹個体より萌芽個体の方が死亡率は低く、胸高断面積の増加率が高かった。さらに、萌芽個体内でよりサイズの大きな萌芽幹の死亡率が低く、相対成長量が大きかった。したがって、優占種であるコナラは、個体数の減少によりその相対幹密度は減少するが、コナラ個体群の優占度は萌芽個体の成長によって維持され、特に、萌芽個体におけるサイズアドバンテージによる効果が個体群維持に寄与していることが明らかとなった。